ピロリ菌感染症

ヘリコバクター・ピロリ菌(略して「ピロリ菌」)は、胃の粘膜に住みつく細菌です。ピロリ菌は慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がん・胃MALTリンパ腫など、多くの胃疾患の共通原因であることが確立されています。多くの方は感染しても症状がないため、気づかれないまま長年経過することが特徴です。しかし「一度検査して、感染していれば除菌する」という単純な行動により、将来の重い胃疾患のリスクを大きく下げられる、対策の意義が明確な感染症です。

ピロリ菌とはどんな細菌?

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ/Helicobacter pylori)は、胃酸という過酷な環境の中でも生き延びることができる、特殊な細菌です。かつては「強い酸性の胃の中に細菌はいない」と考えられていたため、その発見は医学史に残る出来事となりました。

ピロリ菌は胃の粘膜に定着し、長期間にわたって慢性的な炎症を引き起こすことが知られています。らせん状の形と数本の鞭毛(べんもう)を持ち、この鞭毛を使って粘膜の中を移動します。さらに、ウレアーゼという酵素を出して周囲の胃酸を中和することで、本来生きにくいはずの胃の中でも生存できるという特徴があります。

ピロリ菌の感染は、多くが乳幼児期に起こると考えられています。水や食べ物を介した経口感染や、ご家族との接触などが主な経路とされています。一度感染すると、成人になってから自然に消えることはまれで、放置すると生涯にわたって感染が続くとされています。

ピロリ菌は、お薬を使った治療(除菌療法)で取り除くことが期待できます。一般的には、1週間程度、3種類のお薬を服用する方法が行われ、高い成功率が報告されています。仮に一度目の除菌でうまくいかなかった場合でも、二次除菌まで含めると95%以上の方で除菌に成功するとされています。

ピロリ菌は、1982年にマーシャル博士とウォーレン博士によって分離・培養に成功しました。この発見は胃の病気の考え方を大きく変えるものであり、2005年にはノーベル生理学・医学賞が贈られています。

ピロリ菌が原因となる主な疾患

ピロリ菌はさまざまな胃疾患の共通した原因です。一つひとつの疾患を治療するよりも、根本原因であるピロリ菌を除菌することで、複数の疾患を一度に予防できるのが大きなメリットです。

  • 慢性胃炎
  • 胃潰瘍
  • 十二指腸潰瘍
  • 過形成性ポリープ
  • 胃MALTリンパ腫
  • 胃がん

主な感染経路

家族内での経口感染
最も多い感染経路とされています。感染している保護者から乳幼児へ、食事の口移し・食器の共用・キスなどによって菌が伝わると考えられています。乳幼児期は胃酸分泌がまだ弱く、ピロリ菌が定着しやすい環境にあります。
不衛生な水・食物からの感染
衛生環境が整っていない地域では、汚染された水や食物からの感染が起こり得ます。日本の中高年世代の感染率が高い一因は、幼少期の水道・衛生環境が現在ほど整っていなかった時代背景と考えられています。
世代別による感染率の違い
日本人の感染率は世代によって大きく異なり、高齢者ほど感染率が高い傾向にあります。若い世代では衛生環境の改善と除菌治療の普及により感染率が低下しています。この世代差は公衆衛生の歴史を反映するものと言えます。
成人になってからの感染はまれ
成人の胃は胃酸分泌が確立しており、ピロリ菌が定着しづらい環境になっています。日常生活で成人が新たに感染することは、まれと考えられています。

ピロリ菌の症状はありますか?

ピロリ菌感染の最大の特徴は、多くの方が「無症状」であること。だからこそ「検査を受けるまで感染に気づかない」ケースがほとんどです。

多くは無症状
ピロリ菌に感染していても、多くの方は自覚症状がありません。感染しても症状がないまま数十年経過することは珍しくなく、健診の胃カメラやピロリ菌検査で初めて感染が判明することが一般的です。
合併する胃炎による症状
ピロリ菌感染に伴う慢性胃炎により、みぞおちの不快感・胃もたれ・食欲不振などが現れることがあります。ただし、これらは他の胃の疾患でも起こるため、症状だけでピロリ菌の有無を判断することはできません。
関連疾患による症状
胃潰瘍・十二指腸潰瘍を発症すると、みぞおちの痛み(食後または空腹時)が現れます。長期の感染により萎縮性胃炎が進行し、胃がんが発症した場合は体重減少・食欲低下・貧血などが出現することがあります。

ピロリ菌検査、まだの方はぜひ

感染していれば除菌、していなければ安心。
「一度の検査」が、将来の胃の健康を大きく守ります。

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よくあるご質問

症状がないのですが、検査を受ける必要はありますか?

はい、ぜひ一度検査をご検討ください。ピロリ菌感染は多くの場合無症状ですが、長年の感染が慢性胃炎・胃潰瘍・胃がんのリスクを高めます。特に40〜50代以上の方、ご家族に胃がん・胃潰瘍の方がいる方は、症状がなくても検査の意義があります。

除菌治療は保険適用になりますか?

はい、胃カメラで慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの診断がついた方については、保険診療でピロリ菌検査と除菌治療を受けていただけます。ただし胃カメラを受けずに保険適用の除菌治療を行うことは、原則としてできません。詳細は初診時にご相談ください。

除菌治療の副作用が心配です。

主な副作用は下痢・軟便・味覚異常などで、多くは軽度で治療終了後に改善します。重い副作用(強い腹痛、血便、強い発疹、発熱など)はまれですが、もし出現した場合はすぐにご連絡ください。他の薬を服用中の場合は、薬の飲み合わせも事前に確認します。

一度除菌に成功したら、もう感染しないのですか?

成人での再感染はまれとされています。成人の胃はピロリ菌が定着しづらい環境になっているためです。ただし絶対に起こらないわけではないので、症状が再燃した場合は再度の検査を検討します。

市販薬でピロリ菌を除菌することはできますか?

できません。ピロリ菌の除菌には特定の抗菌薬2剤と強力な胃酸抑制薬の3剤併用が必要で、いずれも医師の処方が必要です。市販の胃薬で「ピロリ菌に効く」とうたっているものは、除菌治療ではありません。適切な診断と処方のうえでの治療をお受けください。

ピロリ菌検査は胃カメラ検査で

ピロリ菌検査と除菌治療は、複数の胃疾患を予防できる意義の大きい医療行為です。

ご自身のためにも、ご家族のためにも、一度ご相談ください。

当院の胃カメラ検査の特徴

  • 苦痛を抑えた経鼻・経口の両対応
  • 必要に応じて鎮静剤の使用も可
  • ピロリ菌検査・除菌治療まで一貫対応
  • 異常所見があれば同時に組織検査(生検)を実施
  • Webから検査予約が可能

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※△は検査のみで、外来診療は休診です。

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