薬剤性肝障害(DILI)

薬剤性肝障害(DILI)とは?

薬剤性肝障害とは、お薬や健康食品などが原因で起こる肝臓の障害です。「薬」と聞くと病院で処方された薬を思い浮かべがちですが、それだけではありません。市販薬や漢方薬、さらには健康食品やサプリメントなど、口から取り入れるあらゆるものが原因になる可能性があります。

薬剤性肝障害では、肝臓の細胞が直接傷つくタイプ、胆汁(たんじゅう)の流れが滞るタイプ、そしてその両方が混ざったタイプがあります。あらわれ方は原因や体質によってさまざまです。

薬剤性肝障害は、特定の薬だけが原因になるわけではありません。医師から処方された薬、薬局で買える市販薬、漢方薬、そして「体に良い」とされる健康食品やサプリメントまで、口にするあらゆるものが原因となりうる点が特徴です。「自然のものだから安全」「健康食品だから大丈夫」とは限らないことに注意が必要です。

薬剤性肝障害の起こり方には、大きく2つのパターンがあります。ひとつは、薬の量が多いほど起こりやすい「予測できるタイプ」です。もうひとつは、薬の量とは関係なく、その方の体質によって起こる「体質によるタイプ」で、実際にはこちらが大多数を占めます。そのため、決められた量を正しく飲んでいても起こることがあり、事前に予測するのが難しい場合もあります。

薬剤性肝障害の治療で最も大切なのは、原因となっている薬や健康食品などの摂取を中止することです。多くの場合、原因を取り除くことで肝臓の状態は改善に向かいます。ただし、自己判断で治療に必要な薬を中止すると、かえって体に影響が出ることもあるため、中止の判断は必ず医師にご相談ください。

薬剤性肝障害を起こしやすい方の傾向

薬剤性肝障害は「珍しい病気」ではなく、日常診療で比較的よく見られる肝疾患のひとつです。特定の集団でリスクが高まります。

多剤併用の方(ポリファーマシー)
複数の薬剤を同時に服用している方は、薬剤相互作用や累積効果により肝障害のリスクが上がります。特に高齢者で多剤併用が問題となることが多く、定期的な服薬レビューが推奨されます。
健康食品・サプリメントの常用者
「体に良い」と信じて複数のサプリメント・健康食品を摂取している方は、それらが肝障害の原因となっていることに気づきにくい傾向があります。健康志向が裏目に出ることがあるため、必ず担当医に共有してください。
高齢者
加齢に伴う肝機能低下、多剤併用、薬物代謝の変化などにより、高齢者では薬剤性肝障害のリスクが上がります。処方薬の見直し・減量を定期的に行うことが有効です。
飲酒者
アルコールは肝臓の薬物代謝酵素に影響し、薬剤性肝障害のリスクを高めます。特にアルコール性肝障害と薬剤性肝障害の合併にも注意が必要です。
他の肝疾患を持つ方
既存の肝疾患(B型・C型肝炎、MASLD/MASH、肝硬変など)を持つ方は、薬物代謝能が低下しており、薬剤性肝障害のリスクが上がります。新しい薬剤の開始時には特別な配慮が必要です。

薬剤性肝障害の症状

薬剤性肝障害の症状は多岐にわたり、無症状から劇症化までの幅があります。「新しい薬の開始後に体調が変わった」なら要注意です。

無症状(血液検査で発見)
軽度の薬剤性肝障害は無症状のことが多く、健診の血液検査や、他の疾患の経過観察中の血液検査で偶然発見されることが典型的です。「症状がない」からといって放置してよいわけではありません。
倦怠感・食欲不振
初期のよくある症状。「新しい薬を始めてから何となく調子が悪い」「食欲が落ちた」といった変化は、薬剤性肝障害のサインの可能性があります。担当医に伝えることが早期発見のカギです。
黄疸・褐色尿
肝機能が明らかに低下すると、皮膚や眼球結膜が黄色くなる黄疸、褐色(ウーロン茶のような色)の尿が現れます。この段階では速やかな受診が必要です。特に胆汁うっ滞型で顕著な症状となります。
皮膚のかゆみ
胆汁うっ滞型では皮膚のかゆみが特徴的な症状の一つです。「湿疹はないのにかゆい」「全身のかゆみが続く」といった場合、肝機能検査が推奨されます。
発熱・皮疹
アレルギー反応を伴う薬剤性肝障害では、発熱・皮疹・好酸球増多などの全身症状を伴うことがあります。DIHS(薬剤性過敏症症候群)と呼ばれる重篤な状態の可能性もあります。
劇症肝不全の症状
まれに、急激な肝機能悪化により意識障害・出血傾向・急速な黄疸進行など劇症肝不全に至ることがあります。死亡率が高い緊急疾患ですので、急激な症状の悪化があれば速やかに救急対応が必要です。

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よくあるご質問

健康食品でも肝障害になりますか?

はい、なります。日本では近年、健康食品・サプリメントによる肝障害が増加しています。「自然由来だから安全」「体に良いから安心」という思い込みは危険で、あらゆる摂取物が肝臓に影響する可能性があります。健康食品・サプリメントを摂取する前に、担当医・薬剤師に相談する姿勢が最も安全です。

漢方薬なら安全ではないのですか?

漢方薬も薬剤性肝障害の原因になりえます。特に黄芩を含む製剤や複数の生薬を含む方剤で報告があります。「漢方=安全」ではなく、他の薬剤と同様に肝機能への影響を評価する必要があります。市販の漢方薬も含めて、必ず担当医に共有してください。

新しい薬を始めて調子が悪くなりました。すぐに止めていいですか?

薬剤性肝障害が疑われる場合、原因薬剤の中止が最も重要な治療ですが、自己判断で処方薬を中止することは推奨されません(元の疾患の悪化などのリスクがあるため)。「体調が変わった」と感じたら、まず担当医に連絡・相談し、その指示に従って中止・継続を判断してください。緊急時には救急外来の受診も選択肢です。

市販の解熱鎮痛薬でも肝障害になりますか?

はい、なります。特にアセトアミノフェンは適切な用量では安全性が高いのですが、過量摂取(1日総量が推奨量を大きく超える場合)で重篤な肝障害を起こしうる代表的な薬剤です。市販薬でも用量・用法を守ることが重要で、複数の風邪薬・解熱薬を同時に服用しないよう注意しましょう。

肝障害を起こした薬は、二度と使えませんか?

原則として同じ薬剤の再使用は避けます(再投与で再発するリスクがあるため)。構造が似た薬剤もリスクとなる可能性があります。ただし、他に治療選択肢がない状況では、リスクとベネフィットを慎重に評価したうえで再投与が検討されることもあります。担当医と相談してください。

健診でALT高値と言われました。薬が原因かもしれませんか?

可能性があります。ALT上昇の原因は多岐にわたりますが、薬剤性肝障害も重要な鑑別疾患のひとつです。健診結果を持参のうえ、服用中の全内服物(処方薬・市販薬・漢方・サプリメント)を共有していただければ、原因検索の助けとなります。

薬剤性肝障害から回復した後は、肝臓のフォローが必要ですか?

多くの場合、肝機能の正常化を確認後は特別なフォローは不要です。ただし、胆汁うっ滞型の一部や重症例では、長期のフォローが推奨されることがあります。担当医と相談のうえで判断してください。

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