急性膵炎

急性膵炎とは?

急性膵炎(きゅうせいすいえん)とは、膵臓(すいぞう)に突然強い炎症が起こる病気です。膵臓は本来、食べ物を消化するための消化酵素を作っている臓器ですが、何らかの原因でその消化酵素が膵臓の中ではたらいてしまい、膵臓自身を溶かすように傷つけてしまうことで起こります。

症状の程度はさまざまで、比較的軽く治まるものから、命に関わる重い状態になるものまで幅があります。

主な原因

急性膵炎の原因として特に多いのは、胆石とアルコールの2つです。胆石が膵液の通り道をふさぐことで起こる場合や、過剰な飲酒が引き金になる場合があります。そのほか、お薬の影響、中性脂肪(血液中の脂質)が非常に高い状態、内視鏡を使った胆道の検査・治療のあとなどに起こることもあります。原因がはっきりしないケースもあります。

典型的な症状

急性膵炎では、突然みぞおちのあたりに激しい痛みが起こるのが特徴です。この痛みは背中のほうへ広がることが多く、吐き気や嘔吐をともなうこともあります。前かがみになると少し楽になると感じる方もいます。強い腹痛が続く場合は、我慢せず早めに医療機関を受診してください。

治療について

治療の基本は、膵臓を休ませることです。食事を止めて(絶食)、点滴で水分や栄養を補い、痛みを抑える治療を行います。あわせて、胆石やアルコールなど、もとになった原因への対応も進めていきます。重症と判断された場合には、入院のうえ集中的な治療が必要となります。

「今までにない激しい上腹部痛」があれば、様子を見ずに医療機関へ

急性膵炎は、「痛み止めで様子を見る」対応が命に関わる疾患です。以下のような症状がある場合、時間外・休日でも救急外来の受診をご検討ください。

  • 突然発症した激しい上腹部痛(みぞおち〜左上腹部が中心)
  • 痛みが背中(背部)に放散する
  • 強い悪心・嘔吐を伴う
  • 食後に急激に痛みが増悪(特に脂っこい食事、大量飲酒後)
  • 前かがみになると少し楽になる姿勢を取っている
  • 発熱・冷汗・血圧低下などのショック症状
  • 意識レベルの変化(重症化のサイン)

急性膵炎の主な原因

急性膵炎の原因の中で最も多いのは「胆石性」と「アルコール性」で、両者を合わせると全体の6〜7割を占めます。原因の同定は再発予防に直結します。

胆石性
胆石が膵管出口(Vater乳頭部)を閉塞・刺激して発症。特に女性に多い。原因治療として胆石除去(内視鏡・手術)が必要。
アルコール性
大量・長期の飲酒後に発症。特に男性に多く、慢性膵炎への進展リスクも高い。断酒が再発予防の基本。
特発性
詳細な原因検索でも原因が特定できないケース。診断技術の進歩で徐々に減少しているが、一定数存在する。
薬剤性
ステロイド、一部の免疫抑制薬、利尿薬、抗HIV薬など、特定の薬剤で発症しうる。既往歴のある方は薬剤選択に配慮。
高脂血症性
著明な高中性脂肪血症(TG > 1,000 mg/dL程度)が誘因となる。基礎疾患としての脂質代謝異常の管理が必要。
ERCP後
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)の合併症として発生することがある。予防的な対応が発達している。

これらの他、外傷、腹部手術後、高カルシウム血症、自己免疫性膵炎、遺伝性膵炎など、多様な原因があります。原因の同定は再発予防の第一歩——胆石なら胆石除去、アルコール性なら断酒、高脂血症なら脂質管理、といった原因治療により、再発を大きく減らすことが可能です。

急性膵炎の症状

アルコール性肝障害は初期には無症状のことが多いですが、進行するにつれて様々な症状が現れます。

突然発症する激しい上腹部痛(典型症状)
急性膵炎の最も特徴的な症状。「今までにない激しい痛み」「みぞおち〜左上腹部が中心」「痛みが背部(背中)に放散」「持続的で、少し楽になる姿勢を探す」といった特徴があります。前かがみになると軽減することが多いのも特徴的です。
強い悪心・嘔吐
腹痛に伴い、強い悪心・嘔吐がしばしば出現します。嘔吐しても腹痛が軽快しないのが、急性膵炎の特徴的な点です。何度も嘔吐を繰り返すことがあります。
食後・飲酒後の急激な発症
「脂っこい食事の後」「大量飲酒の後」に突然発症することが典型的なパターンです。特にアルコール性膵炎では、飲酒後数時間〜1日程度で発症することが多くあります。
発熱
炎症反応として38度前後の発熱を伴うことが多いです。ただし高熱が続く場合、膵壊死の感染や胆管炎の合併なども考慮する必要があります。
脱水症状・血圧低下
炎症性のサードスペースへの体液貯留により、脱水が急速に進行することが特徴です。ぐったりする、意識がもうろうとする、血圧が下がるなどのショック症状は重症化のサインです。
黄疸(胆石性の場合)
胆石性膵炎では、総胆管の閉塞により黄疸を伴うことがあります。皮膚や眼球結膜が黄色くなり、褐色尿を来すのが特徴です。この場合、内視鏡的な胆石除去が緊急に必要になることがあります。
重症化のサイン
意識レベルの変化、呼吸困難、乏尿(尿量減少)、皮膚の血色不良、四肢冷感、頻脈——これらは臓器不全・重症化のサインです。この段階では集中治療室での管理が必要で、専門施設への転院も検討されます。

過去に急性膵炎になったことのある方、上腹部痛が気になる方へ

再発予防のための原因治療、慢性化の予防、フォローアップに対応します。
「様子を見る」対応が難しい疾患ですので、お気軽にご相談ください。

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よくあるご質問

急性膵炎は入院が必要ですか?外来で対応できませんか?

急性膵炎はほぼ全例で入院治療が必要です。絶食・十分な輸液・鎮痛薬の投与・重症化のモニタリング——これらは入院管理でのみ確実に実施できます。「軽症だから外来で」という判断は原則として推奨されません。

急性膵炎の症状と「ただの胃痛」との違いは?

通常の胃痛と比べて、①「今までにない激しさ」、②背中への放散痛、③前かがみで少し楽になる姿勢、④強い悪心・嘔吐、⑤持続的(間欠的ではない)——といった特徴があります。「痛み止めで様子を見る」対応が命に関わる場合があるため、判断に迷ったら医療機関へ相談することをおすすめします。

退院後の食事で気をつけることは?

退院直後は脂肪の少ない消化に良い食事から段階的に再開します。急に脂っこい食事を摂ると再発の引き金となるため、担当医・栄養士の指導に従って徐々に通常食に戻します。アルコール性の場合は、原則として禁酒が必要です。

胆石性膵炎の場合、胆石は必ず手術で取らないといけませんか?

胆石性膵炎の再発予防のため、胆嚢摘出術(腹腔鏡下胆嚢摘出術)が原則として推奨されます。膵炎が落ち着いた後、同じ入院中または退院後の予定手術として実施されることが多いです。総胆管に胆石が残っている場合はERCPでの除去が先行されます。担当医と手術のタイミングを相談してください。

アルコール性膵炎ですが、少量なら飲んでも大丈夫ですか?

アルコール性膵炎の方は、原則として断酒が必要です。少量の飲酒でも再発・慢性化のリスクが上がります。「意志が弱いから飲んでしまう」と自分を責める必要はなく、アルコール依存は医学的に治療の対象となる疾患です。

1回急性膵炎になったら、また繰り返しますか?

原因により大きく異なります。①胆石性膵炎は胆嚢摘出により再発リスクを大きく下げられます、②アルコール性膵炎は飲酒継続で高率に再発します、③特発性膵炎は原因不明のため対策が難しいこともあります。原因治療が再発予防の中心となります。

膵炎後に慢性化することはありますか?

はい、あります。特にアルコール性の急性膵炎を繰り返すと、慢性膵炎に進展するリスクが高いことが知られています。断酒による再発予防が、慢性化予防の最も有効な対策です。

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