肝硬変

肝硬変とは?

肝硬変とは、さまざまな肝臓の病気が長い年月をかけて進行した結果、肝臓が硬く変化してしまった状態をいいます。肝臓の中に線維(繊維状の硬い組織)が広がり、表面がゴツゴツとした結節(かたまり)におおわれることで、本来やわらかい肝臓が硬く縮んでいきます。

肝硬変は、症状の有無によって大きく2つの段階に分けられます。ひとつは、肝臓の機能がまだ保たれていて、症状がほとんどない「代償性肝硬変」です。もうひとつは、肝臓の機能が低下し、さまざまな症状や合併症があらわれる「非代償性肝硬変」です。同じ肝硬変でも、この段階によって状態が大きく異なります。

肝硬変は、B型・C型肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝(MASH)など、多くの肝臓の病気が行き着く「共通のゴール」ともいえる状態です。そのため、もとになった原因によって、その後の対応も変わってきます。

代償性と非代償性

肝硬変は「代償性」と「非代償性」の2つの臨床病期に分けられます。両者は予後・治療戦略・日常生活への影響が大きく異なります。

代償性肝硬変
肝臓の構造変化はあるものの、肝機能が保たれ、症状もほとんどない状態。「日常生活は普通に送れる」段階です。多くの症例で長期にわたりこの段階が維持できます。
非代償性肝硬変
肝機能が低下し、腹水・肝性脳症・食道静脈瘤からの出血・黄疸などの合併症が現れた状態。積極的な合併症管理と、肝移植の適応評価が検討される段階です。

肝硬変の主な原因

肝硬変は、さまざまな肝臓の病気が長い年月をかけて進行した末に行き着く、いわば「共通のゴール」ともいえる状態です。そのため、まずはその大もとにある原因が何かをはっきりさせることが、治療の第一歩になります。主な原因には、次のようなものがあります。

ウイルス性
B型・C型肝炎ウイルスの感染による肝炎が慢性化し、長い時間をかけて進行することで肝硬変に至るものです。
アルコール性
長期間にわたる過剰な飲酒によって肝臓がダメージを受け続け、進行することで起こるものです。
MASLD/MASH
肥満や糖尿病などの代謝異常を背景に、肝臓に脂肪がたまり炎症を起こす脂肪肝(MASH)から進行するものです。近年、増加傾向にあるタイプです。
自己免疫性
免疫が誤って自分の肝臓や胆管を攻撃してしまう病気(AIH・PBC・PSCなど)が進行して起こるものです。
薬剤性
特定の薬や健康食品などを長期間、あるいは繰り返し使うことで肝臓が傷つき、進行するものです。
その他
ウィルソン病やヘモクロマトーシスなど、体内に特定の物質(銅や鉄など)がたまる比較的まれな病気が原因となることもあります。

肝硬変の症状

代償性肝硬変では症状が乏しいですが、非代償期に入ると多様な症状が現れます。

代償性肝硬変では症状はほどんどない
代償性肝硬変の段階では、自覚症状はほとんどありません。健診の血液検査や画像検査で偶然発見されるケースもあります。「症状がない」ことが「病気がない」ことではないため、定期的な観察が大切です。
倦怠感・易疲労感
肝機能低下に伴い、なんとなくの倦怠感・疲れやすさが出現します。「歳のせい」と思いがちですが、肝機能の変化のサインとなることがあります。
腹部膨満(腹水)
腹水が貯留すると、お腹が張って服のウエストがきつくなる、体重が急に増える、といった症状が現れます。非代償期の代表的症状で、食塩制限・利尿薬などの管理が必要です。
下肢の浮腫
アルブミン低下と腹水関連の要因で、足のむくみが現れます。「靴下の跡が残りやすい」「夕方には足がむくむ」といった変化に注意が必要です。
黄疸・褐色尿
肝機能が明らかに低下すると、皮膚や眼球結膜が黄色くなる黄疸、褐色の尿が現れます。急激な進行があれば早めの受診が必要です。
意識の変化(肝性脳症)
アンモニアなどの毒素蓄積により、集中力低下・見当識障害・傾眠・時に昏睡といった意識レベルの変化が現れます。「日時が分からなくなる」「言動が変わる」といった変化はご家族が気づくことが多い症状です。
出血傾向
凝固因子の産生低下により、鼻血が止まりにくい、あざができやすい、といった出血傾向が現れます。歯科治療・手術時には特別な配慮が必要です。
皮膚の特徴的な変化
クモ状血管腫(クモの形の赤い血管拡張)、手掌紅斑(手のひらの赤み)、腹壁の側副血行路(お腹の血管の目立ち)などが肝硬変の特徴的な皮膚所見として現れることがあります。

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よくあるご質問

肝硬変と診断されました。もう治りませんか?

肝硬変の広範な線維化・結節形成は基本的には元に戻りませんが、「肝硬変=治療不能・末期」ではありません。原因治療により進行を抑制・遅延させ、合併症の管理と肝がんサーベイランスを継続することで、長く安定した生活を送ることが可能です。一部の原因(例:C型肝炎、アルコール性)では、原因の除去後に線維化の一部改善も報告されています。

お酒は少しくらいなら飲んでも大丈夫ですか?

肝硬変の方には、原因にかかわらず禁酒が推奨されます。アルコールは肝臓に追加の負担をかけ、進行・合併症・肝がん発生のリスクを高めます。特にアルコール性肝硬変の方は完全断酒が必須です。他の原因の肝硬変でも、飲酒の再開は予後を悪化させる要因となります。

食事で気をつけることは何ですか?

まだ肝臓の機能が保たれていて症状の少ない段階(代償性肝硬変)では、特別な制限よりも、栄養バランスの取れた食事を心がけることが基本になります。一方、肝臓の機能が低下して症状があらわれる段階(非代償性肝硬変)に入ると、状態に応じた工夫が必要になります。無理な自己判断は避け、医師や管理栄養士に相談しながら、ご自身に合った食事を進めていくことをおすすめします。

運動はしていいですか?

代償性肝硬変の方は、無理のない範囲での運動が推奨されます。運動は筋肉量の維持、脂肪肝の改善、全身状態の維持に役立ちます。ただし、食道静脈瘤がある方の重量物拳上、過度の運動は避けるなどの配慮が必要です。担当医と相談のうえ、個別の状況に応じた運動計画を立てましょう。

肝硬変では市販薬・サプリメントを飲んではいけませんか?

肝硬変の方は薬物代謝能が低下しており、市販薬・サプリメント・健康食品も含めて、服用前に担当医・薬剤師への相談が推奨されます。「体に良さそう」と自己判断で健康食品を摂取することで、思わぬ肝障害を招くリスクがあります。

健診でALT高値と言われました。薬が原因かもしれませんか?

可能性があります。ALT上昇の原因は多岐にわたりますが、薬剤性肝障害も重要な鑑別疾患のひとつです。健診結果を持参のうえ、服用中の全内服物(処方薬・市販薬・漢方・サプリメント)を共有していただければ、原因検索の助けとなります。

薬剤性肝障害から回復した後は、肝臓のフォローが必要ですか?

多くの場合、肝機能の正常化を確認後は特別なフォローは不要です。ただし、胆汁うっ滞型の一部や重症例では、長期のフォローが推奨されることがあります。担当医と相談のうえで判断してください。

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