慢性膵炎

慢性膵炎とは?

慢性膵炎(まんせいすいえん)とは、膵臓(すいぞう)に炎症が長期間続くことで、膵臓の組織が徐々に硬く変化し(線維化)、そのはたらきが少しずつ失われていく病気です。急性膵炎とは異なり、一度傷んでしまった膵臓の組織は元に戻りにくいという特徴があります。膵臓の中に石(膵石)ができたり、膵液の通り道である膵管が変形したりすることもあります。日本では、長期の過剰な飲酒によるアルコール性のものが最も多い原因とされています。

主な原因

慢性膵炎の原因として最も多いのは、長年にわたる過剰な飲酒です。そのほか、原因がはっきりしないもの、体質や遺伝が関わるもの、免疫の異常によるもの、膵管が詰まることで起こるものなどがあります。

進行の段階

慢性膵炎は、時間をかけて段階的に進行していきます。膵臓のはたらきがまだ保たれていて腹痛が中心の「代償期」から始まり、そこから徐々に機能が低下する「移行期」、消化や血糖の調節に支障が出る「非代償期」、そしてさらに進んだ「重症期」へと移っていきます。

代表的な症状

慢性膵炎では、進行にともなって次のような症状があらわれます。まず、繰り返し起こるお腹や背中の痛みです。次に、膵臓から消化酵素が十分に出なくなることで、脂肪をうまく消化できずに起こる脂肪便や、体重の減少です。さらに、血糖を調節するインスリンの分泌も低下するため、糖尿病を発症することがあります。

治療について

治療では、まず原因への対応として、アルコールが関わっている場合は断酒が最も重要になります。あわせて、痛みをやわらげる治療、不足した消化酵素を薬で補う治療(膵酵素補充療法)、糖尿病が出てきた場合はその管理を行っていきます。禁煙や、脂肪を控えた食事の工夫が役立つこともあります。

慢性膵炎で失われた膵臓のはたらきを完全に元に戻すことは難しいとされていますが、断酒をはじめとする適切な対応によって、進行をゆるやかにすることが期待できます。また、慢性膵炎の方は膵がんのリスクが高まることが知られているため、定期的な検査を続けることが大切です。お腹や背中の痛みが繰り返す方、脂っぽい便が続く方は、一度ご相談ください。

慢性膵炎の主な原因

慢性膵炎の原因は多岐にわたりますが、日本では圧倒的にアルコール性が最多です。原因により治療戦略が大きく異なります。

アルコール性(最多)
日本の慢性膵炎の最も多い原因。長期・大量の飲酒により膵臓の慢性炎症・線維化が進行します。「意志の弱さ」ではなく、アルコール依存は医学的に治療の対象となる疾患です。断酒が唯一の進行遅延の道ですが、依存症治療との連携で対応することができます。
特発性(原因不明)
詳細な原因検索でも原因が特定できないケース。診断技術の進歩で徐々に減少していますが、一定数存在します。若年発症と高齢発症の2つのピークがあり、それぞれ異なる病態が示唆されています。
遺伝性膵炎
遺伝子変異により、家族性に慢性膵炎を発症する疾患。若年で発症することが多く、家族歴があるのが特徴です。遺伝子検査による診断が可能で、指定難病の対象となる場合があります。
自己免疫性膵炎
免疫系が誤って膵臓を攻撃する疾患。ステロイド治療によく反応するのが特徴で、他の慢性膵炎と異なる病態を示します。
閉塞性膵炎
膵管の閉塞(膵管結石・膵管狭窄・膵臓の腫瘍等)が原因で発症する慢性膵炎。原因が特定できれば、閉塞の解除(内視鏡治療・手術)により改善が期待できます。
代謝性(高カルシウム血症・高脂血症)
副甲状腺機能亢進症などによる高カルシウム血症、著明な高中性脂肪血症などが原因となることがあります。基礎疾患の管理が慢性膵炎の進行抑制につながります。
反復性急性膵炎からの進展
急性膵炎を繰り返すことで、徐々に慢性膵炎に進展することがあります。特にアルコール性の急性膵炎で断酒が難しい場合、この経過をたどることが多くあります。

段階的に現れる3つの主要症状

進行に応じて段階的に現れる3つの主要症状

①反復性腹痛
比較的早い段階からあらわれる、代表的な症状です。みぞおちから背中にかけての痛みが慢性的に続き、「痛みの発作」として繰り返すことも少なくありません。飲酒後や食後に強くなりやすいのが特徴です。
②脂肪便
病気が進んできた段階であらわれます。膵臓から出る消化酵素が不足することで、脂肪をうまく消化・吸収できなくなり、油っぽく、においの強い便が出るようになります。体重の減少や栄養不足をともなうこともあります。
③糖尿病
さらに進行した段階であらわれます。血糖を調節するインスリンの分泌が低下することで、糖尿病を発症します。血糖値の変動が大きく、低血糖にも注意が必要な点が特徴です。

慢性膵炎と診断された方、疑いのある方へ

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アルコール性の方の断酒支援もお手伝いします。

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慢性膵炎の方は膵がんリスクが上昇

慢性膵炎の患者さまは、一般集団と比較して膵がんの発生リスクが有意に高いことが疫学研究で示されています。特に遺伝性膵炎ではリスクが顕著に上昇し、アルコール性慢性膵炎でもリスク上昇が知られています。

禁煙と断酒は膵がんリスクの低減にも寄与するため、これらは慢性膵炎の進行遅延と膵がん予防の両方の観点から重要な対応です。

よくあるご質問

慢性膵炎は治りますか?

残念ながら、慢性膵炎の広範な線維化・機能低下は基本的には元に戻りませんが、「治療不能」ではありません。断酒・原因治療により進行を大きく遅らせることができ、疼痛管理・膵酵素補充療法・糖尿病管理により症状と生活の質を守ることができます。「治らない病気」というより「共に長く生きる病気」と捉えるのが適切です。

お酒はどれくらい控える必要がありますか?

アルコール性の慢性膵炎では、「完全な断酒」が原則です。「少量なら大丈夫」という判断は、進行と再発の引き金となります。

「意志の弱さで断酒できない」と自分を責めてしまいます。

意志の問題ではありません。アルコール依存は医学的な疾患であり、脳の報酬系の変化・遺伝的要因・環境要因が複雑に絡み合った状態です。「意志の弱さ」ではなく「支援を受ける権利のある状態」と捉えるべきです。断酒補助薬・専門的な心理療法・自助グループ(AA、断酒会)など、多様なサポートがあります。医療的な支援を受けることで、多くの方が回復への道を歩んでいます。

脂肪便とはどんな便ですか?

油っぽくギトギトした、水に浮きやすい、通常より色が薄く(黄土色〜灰白色)、悪臭を伴う便が特徴です。トイレの水面に脂が浮くのが見えることもあります。外分泌機能低下による脂肪吸収不全のサインで、膵酵素補充療法により大きく改善します。

糖尿病になったと言われました。普通の糖尿病と違うのですか?

慢性膵炎による糖尿病は「3c型糖尿病」または「膵性糖尿病」と呼ばれ、通常の2型糖尿病とは特徴が異なります。①インスリンだけでなくグルカゴンも低下するため低血糖リスクが高い、②血糖の変動が大きい、③早期からインスリン療法が必要になることが多い、といった特徴があります。糖尿病専門医と連携した管理が推奨されます。

食事で気をつけることは?

低脂肪・少量頻回食が基本です。1回の食事量を減らし、1日5〜6回に分けて摂る方法が推奨されます。脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の欠乏に注意し、必要に応じて補充します。禁酒は必須、禁煙も進行遅延と膵がん予防に有効です。栄養士との相談で、ご自身に合った食事計画を立てましょう。

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